「歳をとると誤嚥性肺炎に注意しましょう」という言葉をよく耳にします。誤嚥性肺炎は食べ物や唾液が誤って気管や肺に入り込み、そこに存在する細菌が炎症を起こすことにより発症します。そのため、口腔内が不衛生で細菌が増加している状態では、肺炎リスクが高まります。高齢になると、口腔ケアに対する関心が低下すると言われています。日頃から歯磨きやうがい、定期的な歯科受診などを行い、口腔内を清潔に保っておくことが大切です。
また、飲み込む力が低下すると誤嚥しやすくなります。さまざまな研究により、加齢とともに嚥下に関係する筋力が低下することや、筋肉量が減少することが報告されています。例えば、舌圧(舌の力)は年齢とともに低下し、男性では60歳代以上、女性では70歳代以上になると明らかに低下します。最大舌圧が30kPa未満は低舌圧とされ、20kPa未満になると誤嚥性肺炎の危険性が高まります。さらに、飲み込むときに喉を持ち上げる働きをする、あごの筋肉「オトガイ舌骨筋」も加齢により減少します(図参照)。この筋肉が減少している方は、誤嚥しやすいことが知られています。